2019年5月30日(木)
あらすじ
おしん(田中裕子)の働きぶりを見てきた師匠のおたかさん(渡辺美佐子)は、おしんの正式な弟子入りを許します。
16歳という年齢は、髪結いの修業には遅すぎるのを分かったうえで、おしんは新しい人生を踏み出します。
その夜、おしんは母に手紙を書きます。
おしんは故郷の家へは二度と帰れないことを分かっていました。
帰るときは、お金をたくさん持っていかないと敷居はまたげないという気持ちが、おしんを人の二倍も三倍も働かせるのです。
参考:Yahoo!テレビ
おしんキャスト
田中裕子、伊東四朗、渡辺美佐子、乙羽信子、大橋吾郎、田中世津子
前置きレビュー
ただ者じゃない
おしんは、とにかく自立できるために必死です。
おりっちゃんに目立つ仕事をさせ、自分は裏方の仕事をしますが、栄養を考えつつも年季の入った料理を作れば、着物を3晩で仕立て上げるし、16歳くらいで立派な字も書ける。
おまけに、吉原の土手に咲く野菊で、作法を心得た生け花もできるときている。
お師匠のおたかさんは、どこでお針や字を習ったのかと聞くと、さすがに脱走兵の俊作に文字を習ったとは言いません。
酒田の米問屋で、大奥様に仕込まれたと話しますが、「どうしてやめたの?」と聞かれます。
また、ここでおしんは、薄暗い過去を背負ってしまっています。
玉の輿に乗れたのに、まさか奉公先のお嬢さんと恋敵になって、居づらくてやめたとは言えず無言です。
気風のいいおたかさんは、いろいろ事情があるだろうけれど、やる気があればそれで良い。
その日から、ようやくおしんは、弟子入りを許されます。
庄治のいら立ち
おしんは、竹造に居所を知られて売り飛ばされたら困ることと、字の読めないふじのために、おりきさんのところへ手紙を出します。
切ない事情ばかりです。
おふじさんは、おしんには自由に生きて欲しいと、竹造たちには死んでもおしんのことは話しませんが、兄の庄治は、今年も米が不作で、おまけに世界大戦のおかげで、米の値段が上がり、ますます大変になりいら立っています。
その怒りはあからさまで、おしんが座敷女中に売られていたら、もう少しなんとかなったのに、どこか逃げてしまって、家のことも考えないで、おしんが見つかったら、ただじゃおかないと恨まれています。
竹造には、庄治しか頼れないので、庄治の機嫌を取るしかありません。
感想
やったね!
仕事の合間に、おしんは河原で咲いていたアザミで花を活けていますが、さりげない心配りが、ため息です。
お師匠さんの着物を仕立てて余裕があったのでしょうが、もちろん鼻にかけるようなことはしません。
お師匠さんは、着物の仕立ての良さに関心し、年下のおりっちゃんを立てて、下働きをしていた様子に、おしんがやる気さえあれば弟子にすると言ってくれます。
今のおしんにとって、これほどうれしいことはありませんが、お師匠さんは、こんなに色んな事ができるなら、わざわざ髪結いの修行などしなくても良いのにと言います。
他に生き方があるのだろうけれど、あえて大変な道を選ぶところが、おしんらしいところなんでしょうね。
それにしても、お師匠さんの、細かいことをグダグダ言わない気風の良さが、ほんと気持ちいいです。
おしんからの手紙
弟子入りが決まり、おふじさんのところへ手紙を出します。
もちろん、おふじさんは字が読めないので、おりきさん宛てに送り、おりきさんが、代わりに手紙を読んでくれます。
元気でいてくれたらと、おふじさんは、おしんのことを信じているので、わざわざ字の読めない自分に手紙など必要ないと、ほんとうに済まなさそうな表情です。
「じぇに(銭)送るから」とおしんの、この気遣いが、うれしいですが、結びには「母上様」で〆ていて、ほんと良くできた娘です。
兄のいら立ち
おふじさんにとって、利発なおしんが好きに生きていることが、生きがいなんだと思います。
それに比べて、長男の庄治は、どんなに働いても、楽にならない暮らしにいら立ち、母のおふじさんにも、命令する始末に言葉もありません。
小作のヒドイ状況がわかるとは言え、救えない庄治の姿が、ほんとうに切ないです。
思い出をたどって
おしんは、圭ちゃんと一緒に、昔髪結いをしていたところを探しますが、戦争ですっかり様子が変わってしまっているので、どの辺にあったのか、面影をたどるしかありません。
ふと、一軒の玄関前に、若かったときの姿を、おしんは思い起こすことができました。
関東大震災に東京大空襲があったので、その後、髪結いにいた人たちが、どうなってしまったのか、まったくわからないと言いますが、長い人生、消えゆくものもたくさんある中で、残っているのは思い出だけなんですね。
淋しくもあるけれど、おしんは気丈に今を生きています。
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